本サイドイベントは、アフリカ農業の持続可能な成長を支える重要課題について、環境再生型農業と土壌の健全性という視点から議論を深めることを目的としています。
農業の生産性と持続可能性を支える基盤は「健全な土壌」です。土壌劣化は、過剰利用、森林破壊、浸食、気候変動など複合的要因により進行しており、農業のレジリエンスやフードシステムの安定を阻む大きな要因となっています。
その改善は、農業生産の向上のみならず、アグリビジネスの発展、農産物加工や気候変動に強いバリューチェーンバリューチェーンの構築にもつながり、若者による起業の可能性も広がります。こうした土壌の健全化は、単なる環境対策にとどまらず、包摂的成長と雇用創出の要ともいえます。
「アフリカ土壌イニシアティブ(Soil Initiative for Africa: SIA)」は、こうした土壌の再生を通じてアフリカ農業を変革し、若者を中核的な担い手として位置づける大陸規模の取り組みです。2024年5月、ナイロビで開催された「アフリカ肥料・土壌の健全性サミット(AFSHS)」では、「ナイロビ宣言」とともにSIAおよび「アフリカ肥料・土壌の健全性行動計画(AFSHAP)2023–2033」が採択されました。これに基づく国家・地域・大陸レベルの行動計画は、2025年11月までに策定され、2034年まで段階的に展開される予定です。SIAの実施を推進する事務局機関は、アフリカ農業研究フォーラム(FARA)が担っています。
このサイドイベントでは、アフリカ農業のボトルネックとなっている「土壌の健全性」に焦点をあて、日本、特にササカワ・アフリカ財団(SAA)および共催機関である国際農林水産業研究センター(JIRCAS)の貢献と将来展望についても共有します。
SAAは、農業普及サービスのためのアフリカフォーラム(AFAAS)とともにSIAの「農業普及・助言サービスと人材育成」分野の共同リード機関として、アフリカの土壌の健全性の回復に注力しています。アフリカにおける土壌改善の取り組みを拡大することは、農業の生産性向上、食料安全保障、そして環境の持続可能性に直結します。
日本とアフリカが知見と技術を共有し、革新的な土壌管理ソリューションを展開することで、小規模農家の能力強化、そして持続可能なアフリカの未来の構築に寄与することが期待されます。
●プログラムは都合により変更になる場合がございます。
SAAのコミュニケーション&アドボカシー担当。学界、政府、民間セクター、国際非営利団体など、幅広い分野で活躍してきた経験豊富な専門家。現在は、ササカワ・アフリカ財団(SAA)にて、農業開発を支援する広報活動や政策提言において重要な役割を果たしている。
現職以前は、SAA のモニタリング・評価(M&E)チームを率い、エチオピア、マリ、ナイジェリア、ウガンダにおけるプログラム全体の成果に基づく計画立案とインパクト評価に貢献した。また、情報システムと組織開発に重点を置いたプロジェクトマネジメントおよびコンサルティングの分野でも豊富な経験を有している。
アディス・アベバ大学で情報科学の修士号を取得し、同大学で講師および大学事務長も務めた。Abay Bank S.C. 会長など、シニア管理職を歴任し、戦略的監督およびガバナンスを担当してきた。その多面的な専門知識により、アフリカ全域におけるインクルーシブでエビデンスに基づく開発イニシアチブを推進する上で、重要な役割を担っている。
SAA会長。1992年から2015年まで国際肥料開発センター(IFDC)の総裁兼最高経営責任者(CEO)を務め、40年間に及ぶ国際農業開発分野でのキャリアを通じて、100カ国以上で活動した経験を持つ。ロイ氏のリーダーシップの下、IFDCは世界の持続的な農業生産性向上のためのプログラムを拡大し、農民の貧困削減や、世界の食糧と栄養の安全保障・環境保護・経済成長を追求しながら、農家を支援してきた。2006年にはナイジェリアのアブジャで開かれたアフリカ肥料サミットの中心的なオーガナイザーを務めた他、2008年には米国衆議院の党員集会でスピーチをし、2012年、世界環境計画(UNEP)のグローバル・ニュートリエント・マネジメント・プロジェクトの運営委員を務めた。
CGIARの業務執行最高責任者であり、農業科学と政策の分野で世界的に高い評価を受けるリーダー。現職以前は、国連食糧農業機関(FAO)の首席科学者およびアラブ首長国連邦の国際塩水農業センター(ICBA)の事務局長を務めた。
カナダの農業研究機関で複数のシニア研究職とリーダーシップ職を歴任し、国際食料政策研究所(IFPRI)、イギリスの農業と生物科学国際センター(CABI)、カナダの専門能力開発研究所など、国際的な機関の理事会にも貢献してきた。また、2021年国連食料システムサミットの科学グループメンバーおよびCGIARシステム理事会のメンバーも務めた。これまで注目されてこなかった作物の有効利用、食料システムの再考を強く推進しているほか、農業における非淡水利用の促進と科学分野における女性のエンパワーメントに関する研究で国際的に知られている。
科学と政策への貢献により、数多くの国際的な栄誉を受賞しており、Time誌の「世界で最も影響力のある100人」(2025年)、モロッコ国家功労賞(2014年)、Global Thinkers Forumの「科学分野における優秀賞」(2014年)などが含まれる。また、New African誌の「最も影響力のあるアフリカ人」(2025年)に選出され、 Forbes Afrique誌の「最も影響力のある女性 50 人」にも選ばれている。
モロッコのハッサン II 農学獣医学研究所で農業科学の学士号(1993 年)および遺伝学・植物育種学の修士号(1995 年)を取得し、スペインのコルドバ大学で遺伝学の博士号(2001 年)を取得している。
農業と農村開発を専門とする開発経済学者。世界銀行の農業経済担当主任を約30年務め、農業開発に関する研究を世界規模で展開。長年にわたり、アフリカにおける農業研究に対する世界銀行の支援の開発と実施を指揮してきた。また、農業普及およびアドバイザリーサービスプログラムに対する世界銀行の支援をリードし、アフリカの農業における人的資本開発に対する世界銀行の支援の再開を主導した。 現在は、アフリカの農業研究におけるネットワーク(FARA、ASARECA、CCARDESA、CORAF)および農業アドバイザリーサービス(AFAAS)の戦略顧問を務め、RUFORUMの国際諮問パネル議長、北米農業普及ネットワークの上級顧問を兼任。シカゴ大学で経済学の博士号、ミネソタ大学で農業経済学の修士号を取得している。
アフリカ農業研究フォーラム(FARA)のリサーチ・イノベーションディレクターであり、農業研究・開発分野で20年以上の経験を持つ。ナイジェリアのイバダン大学で農業システム農学/土壌肥沃度に関する博士号を取得し、イノベーション・プラットフォーム・モデルを推進したことで知られる「サハラ以南アフリカ・チャレンジ・プログラム(SSA CP)」など、主要なイニシアチブを率いてきた。キャリアはアフリカ各地にわたり、フォート・ハレ大学、トータル・デベロップメント・インターナショナル財団(TODEV)、ARATI Environmental社、国際熱帯農業研究所(IITA)などでアカデミックな役割やリーダーシップ職を歴任。また、農業生態学とその他のイノベーションに関する国連ハイレベル専門家パネル(HLPE-14)のメンバーとして、ハイレベルの政策議論にも貢献している。南アフリカのフォート・ハレ大学で農業イノベーションシステムの非常勤教授を務め、16名を超える大学院生の指導に尽力しており、120件を超える査読付き論文の著者でもある。
ウガンダの農業起業家兼小規模農家であり、東アフリカ農民連盟(EAFF)の会長を務める。アフリカ全土の農民の代表として、世界農民機構(WFO)の理事会においてアフリカ代表、パンアフリカ農民機構(PAFO)の代表を務めた。AU-EU 農業タスクフォース、FAO の「一国一品の優先製品(FAO – OCOP)」、FAO の森林・農場ファシリティ(FFF)など、世界および大陸レベルの取り組みで重要な役割を果たしている。協同組合の発展、アグリビジネス、農業政策に深く関わっており、数多くのグローバル、地域、国の理事会や委員会委員も務めている。気候変動へのレジリエンスとデジタル農業の推進で知られ、農民組織での活動により、国内外で数々の賞を受賞している。
SAA戦略的パートナーシップ事務所長。2018年に地域事務所長としてSAAに入団し、エチオピアのアディス・アベバを拠点に活動している。米国バージニア工科大学で園芸学の博士号、フィリピン中央ミンダナオ大学で園芸学の修士号、ケニア東部アフリカ大学で農学の理学士号を取得。世界野菜センター、国際熱帯農業研究所(IITA)、ハーベストプラス、国際熱帯農業センター(CIAT)、ワーヘニンゲン植物研究所(オランダ)で研究開発および指導的役割を担ってきた。アフリカの農村や都市のコミュニティに影響を与える、総合的作物管理技術、気候変動に強い農業手法、回復力のある作物品種、栄養に配慮した技術などの農業技術やベストプラクティスの開発・普及を通じて、農業と栄養を統合する学際的な研究開発分野に注力している。現在はSAAの戦略的パートナーシップを調整し、アフリカにおける実践的かつ革新的な農業改良普及指導サービスや能力開発システムの設計とプログラム提供を強化する。また、SAAの資金動員戦略も主導している。
農業普及および農村開発に関する専門家であり、AFAAS の事務局長を務める。ケニアのエガートン大学で農業・農村イノベーションの博士号、農業普及の修士号、農業・家政学の学士号を取得。農業普及、政策、農村開発においてインパクトのある取り組みを主導し、AFAAS の農業普及スペシャリストおよび農業普及・プログラムディレクターとして優れたリーダーシップを発揮している。ラストマイルのサービス提供、パートナーシップの構築、資源の動員、政策の推進に貢献。農業システムに関する戦略的かつ実践的な知識を持ち、研究・開発分野全体に変革をもたらしている。
パパ・サリウ・サール博士は、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)の主任研究員。土壌微生物学および持続可能な農業の専門家であり、セネガル出身。2016年にJIRCASに着任し、日本財団助成のTERRA Africaプロジェクトをはじめとする各種研究プログラムにおいて中心的な役割を担っている。これらのプログラムでは、土壌の健全性や環境再生型農業(RA)の実践を通じて、サブサハラ・アフリカにおける気候変動に強く、小規模農家を中心とした農業の発展を推進している。
2010年に九州大学にて農学博士号を取得。その後、2011年から2016年にかけて京都大学で博士研究員として研究を継続。セネガルのシェイク・アンタ・ジョップ大学において植物生物学の修士号を取得。主な研究領域は熱帯土壌における窒素およびリンの循環であり、微生物の働きを活用することで、化学肥料への依存を低減しつつ、土壌の肥沃度と作物生産性の向上を目指している。
アフリカおよび日本の大学や研究機関との共同研究にも積極的に関与しており、ガーナ、マダガスカル、ブルキナファソ、カメルーンを含む複数国でのプロジェクトに参画。科学的知見の蓄積に加え、アフリカの農業システムにおける能力強化にも貢献している。
研究活動にとどまらず、学術・文化交流にも深く関わってきた。2008年から2009年には福岡留学生協会(FOSA)会長を務め、また、九州大学アフリカ人会(ASKU)および在日アフリカン・ディアスポラ・ネットワーク(ADNJ)の創設メンバーでもある。
2022年にリード・スペシャリスト(環境再生型農業)としてSAAに参加。オランダのワーゲニンゲン大学にて博士号を取得。生産生態学と資源保全学を専門とする。ウガンダの国立農業研究機関(NARO)にて、シニア研究員、技術普及・アウトリーチ プログラムリーダー、研究部長を歴任。農家グループや政策立案者などの関係者と、気候変動に配慮した農業技術の普及に広く取り組んできた。国連アフリカ経済委員会の支援により、アフリカ科学アカデミーのClimate Research for Development (CR4D)イニシアチブにポストドクターとして参加。植物栄養学におけるカーボンマイナスの実現と、作物生産システムにおける持続可能な栄養利用について強い関心を寄せる。
ササカワ・アフリカ財団(SAA)理事長。国際的な開発、貿易、持続可能性に関わる分野において、国際的なリーダーシップ経験を豊富に有する。住友商事のバグダッドおよびシンガポール駐在を通じて、鋼管貿易における幅広い国際経験を積んだ後、住友商事ヨーロッパグループにおいて、パリおよびロンドンを拠点に欧州鋼管部門の要職を歴任。2011年に住友商事の理事に就任し、2014年には執行役員となり、鋼管本部長として同社を牽引。2017年にはエネルギー本部長に就任し、グローバルな事業拡大を推進した。
2019年に住友商事を退任後、資源・化学品本部の顧問を務めるとともに、ジクシス(株)の会長に就任。2022年に退任するまで、持続可能な成長を実現する国際ビジネスの発展に貢献し、多国間のパートナーシップ構築や持続可能な産業成長を支援してきた。